呆然と立ちすくむその背後から 

日直当番のために早起きしたヒヨのヒヨボとキーキが通りがかります。

扉が開き

目の前に現れた来客は ・・・

  「あ ・・」  「あっ!」

短い声を発し、夢うつつなひらめさんと 

その来客は しばし見つめあいます。

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♪ べべん べんべん べべん べん ♪♪  べべん べんべん ♪ べんべん べん♪

     
        どこからか聴こえてきたその声は 決して空耳なんかじゃないのかもしれません。

そう思うと なぜだかす〜っと気持ちがラクになり

   ”さて、また明日からがんばらなくちゃ!!” と、おのおのは岐路に向かっていくのでありました。

八重山そばを食べたあの日から、すっかりお店のとりこになったメジ郎ママは

「ここに来ると素直になれるわ」と、一人(匹)でこっそりと隠れ家にしていた

だけに、ショックを隠しきれない様子です。

シラサギさん、アオサギさんも冷静さを失っています。

妊婦のリリ子さんは

大きなお腹をさすりながら

泣き出すしまつ ・・・

さあ、おおさわぎです!!

もちろん うわさは瞬く間に拡がって ・・・

騒ぎには とっても敏感な大ドババさん! 当然のごとくすっ飛んできます。 

ドバトさんは甥っ子のホタロウに刺激されて

一ヶ月前から聴講生として講義に出かけているのです。

そこに最低必要限度のものだけを 詰め込んで ・・・

とくとく とくとく ・・・  とくとく とくとく ・・・

    お酌をしあう音が心地良く響き渡り ・・・

今夜は暖簾も下ろして 臨時休業。

「たとえ海を越えたって それこそ時空を超えたって   同じ想いがあるならば ・・・ 

         我々はどこかで繋がりあえるのかもしれませんね


                だって みんな 元はひとつのものだったのですから  べんべん」

あっ あの ・・・ ガー兵衛さん

  ちょっ ちょっと ちがうんですけど ・・・

「しばらく お店をお休みいたします」といったって それが果たしていつまで続くのか ・・・

もぬけの殻になった店の中 ・・・ どこにも見当たらないひらめさんの姿 ・・・ 皆が騒がないはずがありません。

それを聞いたちくわさんも思わず声を荒らげます。

もう、日直のお当番どころではありません。

友は言いました。  「ああ よかった! ようやく会えた! ずいぶんずいぶんと探したんだよ」

そう! ひらめさんは必ずどこかにいるんだ!

               今 目の前に 姿がみえなくたって ・・・

その刹那 みんなは思い出したのです。  ひらめさんが、いつもよく言っていたことを ・・・

ひとしきり みんなが泣いたり 騒いだり 落ち込んだりした夜 ・・・

         ふと空を見上げると そこには大きな満月が輝いているではありませんか。

みんなが右往左往しているそんな中、いつもは感情的になりやすいハムさんだけが

なぜだか黙々と絵を描き続けておりました。

高架下からは 「ボ ボ ボ ボ 〜ッ〜」と 大ドバトさんのおたけびが聞こえてきました。

お店を唯一の憩いの場にしていたスズコさんはオロオロと立ち往生 ・・・

ひ〜っ!!! と叫ぶキーキ・・・

それはひらめさんにとって 今あるものを

      手放さなければならない選択でもありました。

静かに夜が深まっていきます。

二度と思い出したくない封印された過去 ・・・

これでもかなり動転しているのです。

そして 翌朝 ・・・

友が帰っていったあと ひらめさんは仕度を始めます。

       どこからか見覚えのあるカバンがでてきました。

だけど、ひらめさんの気持ちはもう 決まっております。

帰り際 その友は言いました。

   「ひらめさん、実は お願いがあるんだ。  

            力をかしてほしい ・・・ 」

  いくら時を隔てても ・・・

多くを語りあわずとも ・・・

       こんなにも通じ合える ・・・

だけど それはもう ひらめさんにとって

辛いことでも 悲しいことでもありませんでした。

なぜならば ここにあるのはまさに「今」にすぎないのですから!!

「あ〜〜っ!!」 「おう〜っ!!」

二人(匹)は再び声をあげて 抱き合いました。

PART2 STRAT します!

そのとたん、失われていた風景が瞬時にして蘇り ・・・

PART1 THE END

だって 貼り紙がしてある扉の中、昨日までふつうにあった店内の気配が

跡形なく消えており、ひらめさんの姿がどこにも見当たらないのですから ・・・

早朝 最初にその貼り紙をみつけたのは ドバトさんでした。

そう!その来客とは、まぎれもなく 

ひらめさんがかつて昔、時を同じくした友だったのです。