今度は敬称あり
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うつむいたままのガーコさんの器に ドバトさんがそっと料理を取り分けてくれました。
ガーコさんは 二人(匹)の姿を遠めに見つめながら虚しさを感じるのと同時に
妹に対しての何とも言えない感情が湧き起こり そして又、そんな自分自身にも
ほとほと嫌気がさし、いたたまれなくなって ここにやってきたのです。
昔からやりたいことを自由に謳歌しているように見えるビビ子さんは
ガーコさんとはほとんど年齢差がないというのにいつまでも若々しく
くったくがありません。
どれだけ遅く帰宅しても 必ず起きて待っていてくれたお母さんのことを ・・・
「ホーホー どうしてまた そんなことを ・・・」
そう、3日前 ガーコさんの妹である「ビビ子さん」がアメリカから里帰りしてきたのです。
そんな彼女としゃべっていると お父さんは本当にうれしそう。
ひとくちひとくち かみしめながら
熱いものが込み上げてくるのがわかります。
カウンターに座った二人(匹)の目の前に 料理がどんどんと運ばれてきます。
「ちょっとちょっと! なにもそんなに急に
慌てて帰らなくたっていいじゃないの!」
「・・ ええ ・・ でも ・・・ 」
口ごもるビビ子さんは 何だか思いつめたような様子です。
そして ちくわさんの張りのある声!!
ドバトさんはガーコさんの手(羽)をとり ずんずんと歩いていきます。
そう思うと ガーコさんはいても立ってもいられません。
出された料理を丁寧にいただいたあと あわてて家に帰っていきました。
「おかあちゃん ・・・ 」
たどり着いた先には 赤い幟がはためいておりました。
そう、ガーコさんは数年前に亡くなったお母さんのことを思い出していたのです。
ガーコさんは それをひとくち口にした瞬間
「あっ」 と 小さな声をあげました。
ガーコさんの目からポロリと涙がこぼれ落ちます。
その刹那、ガーコさんは ハッと気付いたのです。
”いえ、おかあちゃんにだけじゃないわ! わたし おとうちゃんやビビ子に対しても自分の思いばかり押し付けて
いたのかもしれない。 自分だけがこんな思いをしているのになによって ・・・ ああ、わたし なんてこと ・・・ ”
そんなこんなを つらつらつらつらと、ドバトさんにぶちまけきった時でした。
玄関の扉をあけると ちょうどビビ子さんが帰り支度をしているところでした。
ガーコさんは 妹のこんな表情を見るのは初めてのことでした。
だけど 「ごめんなさい」って言いたくたって その相手はもういません。
ああ それなのに ・・・ それなのに ・・・ わたし なんていうことを ・・・