彼女はひとり言をつぶやきました。

「それにしてもあたしって、つい相手のペースに合わせちゃうのよね

でも、子どもが元気でいてくれるだけでありがたいっていうのは本当だわ!

うん!これはたしかにそう!! あたりまえすぎて忘れていたのね・・・ 」

その同じ時刻 ・・・ 「あらっ!?」    洗濯物を取り込んでいたキーキのおかんは耳をすませます。

食事の支度をしながら、口ずさむかあちゃん

そして、その日の夕方

♪ べべ〜ん べんべん♪ べべ〜ん♪ べん♪ べべ〜ん♪べんべん♪ べべ〜ん♪べん♪

    どこからともなく心地の良い音色が聴こえてくる ・・・ 

そんな感覚を覚えながら 二人(匹)はふふっ!と笑い合いました。

キーキのお母さんこと、おかんも

当然のようにつられて話します。

さて、翌日 

   同じくいつもの時間 いつものスーパーで出会う二人 ・・・

ところが、かあちゃんが涙ぐんでいるのを見て

一瞬 立ちすくんでしまいました。

おかあさん、そう、ヒヨボのかあちゃんは ハッとしました。

家にたどり着き めまいは治まったものの 耳の奥のほうで

なにかしらの音が聞こえてくる ・・・ような気がしています。

その時です。 玄関のドアの音がして 「ただいま〜!!」 元気のいい声がしました。

「ヒヨボ ごめんね」  彼女がそうつぶやいた時でした。

    またしても先ほどの音が聞こえてきたのです。

そう! ヒヨボは生まれたとき体が弱く、しょっちゅう熱を出していたのです。

   そのたび母ちゃんは祈りました。

 「この子がどうか無事に元気に育ちますように 。。。 他は何も望まないわ」

「音」は しだいに鮮明になり 「音色」となって奏でられていくのがわかります。

         そして、いつの間にか 不安は安らぎに変わっているのでした。

ヒヨボが小学校に行きだしてからも 無意識に繰り返されるそのフレーズは

言霊となり ・・・  いつのまにかヒヨボ自身になっていったのです。

そのかいがあって ヒヨボはその後すくすくと成長し、元気を通り越して大変やんちゃ坊主になっていったのです。

救急箱を開けてガサゴソしていると、

底のほうから出てきたものは子供用の氷枕でした。

虚弱だったヒヨボをそ〜っとそ〜っと育ててきた母ちゃんは

その後も、声を荒らげたりきつくしかったりすることができません。

まさにその時 「ただいま〜!!」と元気な声がしました!

だけど会話は明らかに いつもと違います。

ヒヨボはわざと手(羽)足をバタバタさせながらも

    嬉しさを隠しきれない様子でした。

強く 強く 強く ・・・ !!

そんなことはおかまいなしに かあちゃんはヒヨボを力いっぱい抱きしめます。

最近は帰ってきても「けっ!!」と睨みつけるだけの

  ヒヨボでしたが、今日は表情がちがいます。

記憶が蘇ります。 これは ・・・ あの子の ・・・

スーパーの片隅で ヒヨボの母ちゃんとキーキのおかんが立ち話をしながら我が子を嘆きあうのはいつもの光景でした。

”あの頃は とにかく元気でいてくれることだけを望んでいた ・・・ それだけで充分だった ・・・

  それなのに私 ・・・  いつのまにかあの子のこと ・・・”

                   そう思うと 涙が堰をきったかのように溢れ出します。

今日もひとしきりお喋りをして帰ろうとしたところ

ヒヨボのかあちゃんは軽いめまいに襲われます。

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えっ!? その後のヒヨボとキーキですか? 言うまでもありません♪

探検ごっこを楽しみながら 時折ひらめさんのお店で おソバをごちそうになっていますよ(^^)♪

二人は寄り添って いつまでも歌っておりました。

そのかわり 「あなたはどうしてそんなことばかりするの。どうしてそんなに悪い子になってしまったの。ああ!いやだわ!」

  ・・・ それが口癖になってしまったのです。  それは ともすれば もっと残酷なことだったのかもしれません。