そこへ ガラッ ・・・と

扉が開く音がしました。

ちくわさんはちょっと荒れ気味です。

睨みつけてるその相手 それは、同じ町内に住むマガモの「がー兵衛さん」でした。

ちくわさんは昔度々 がー兵衛さんにお説教をされたことがあり(もちろん

非があるのはちくわさんなのですが )うらみつらみ根にもっていたのでした。

それを見たシラサギさんがしみじみと言いました。

♪ べべん べんべん♪ べべん べん♪ べべん べんべん べんべんべん♪♪ べべん べんべん ♪べんべんべん♪
  

それはあたかも ひらめさん自身が自問自答をくりかえしているようにも聴こえ取れるようでした。

      だけど、ひらめさんの音色はやはりひらめさんの音色であり、そこにいるものは皆、

          大きくてやさしいエネルギーをしっかりと受け取ったのです。

シラサギさんがすかさず言いました。

ドバトさんも乗り気です。

そして穏やかに言いました。

表情が輝いています。

ちくわさんが突然立ち上がって言いました。

今日、あんまり上手にお好み焼きを作れなかったドバトさんは

”迷惑をかけてしまったのでは・・・”と、内心ちょっと落ち込んでいたのです。

一瞬たりとも醜い考えをおこした自分を

本当に恥ずかしいと思い、心から悔やみました。 

その晩 3人(匹)は ひらめさんのお店に集まります。

さっきまで あんなに上機嫌だったちくわさんの

心のなかにじわじわと悪魔の影が忍び寄ってきます。




   彼がコショウの瓶に手(羽)を伸ばしたその時です。

ところが ・・・ その時 ・・・

ちくわさんは ハッと我に帰りました。

みんなの笑顔をみていると ちくわさんは

胸がいっぱいになりました。


こんな気持ちは本当に久しぶりです。

← 以前は優雅な奥様だった

シラサギさんですが、ここのところ

こんな企画で多忙な日々です。

しかし ・・・ しかし ・・・

握りしめたコショウの瓶を そっと戻そうとした時です。

そこには二つに折りたたんだメモ用紙のようなものがありました。

そして イベントは滞りなく終了しました。

どこからともなく ひらめさんの三味線の音色が聴こえてきた ・・・ ような ・・ 気 ・・・ がしました。

   そして その瞬間 ちくわさんは先ほどのお客さんや子供たちの笑顔を思い出したのです。

夢中になって作り続けているうちに、閉店の時間まであとわずかになりました。

お好み焼きは大好評です!!

始めは緊張していたちくわさんでしたが、すぐに手(羽)つきも慣れて テントの前にはお客さんの行列が ・・・

そして、いよいよ当日になりました。

広場は大勢で賑わっています。

先日もテレビをみていて ・・・

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「いらっしゃ ・・・・ 」と ひらめさんは言いかけて

ふりむきましたが誰もいません。

だけどよく見ると きれいに洗ったお皿がビニール袋に包まれて置かれてあります。

やけどをしてしまいました

二人(匹)はひらめさんに後押ししてもらいたい気分ですが、依然として三味線の「しゃ」の気配すらありません。

がー兵衛さんは黙って代金を支払うと一礼して帰っていきました。

  美女には弱いこの二人(匹)

おっと いきなり顔つきが変わったではありませんか!!

そのとたん、ドバトさんの表情もちくわさんと同じく輝きはじめました。

    常連さんたち 少しずつ 少しずつですが 今できることや、夢に向けて動き出そうとしています。

それからは堰を切ったように音色が流れ出します。

♪べべん べんべん♪ べべん べん♪

その時です。  ♪べんっ♪

背後で音がしました。 ひらめさんが三味線を手(ヒレ)にしているではありませんか!!

                             ああ!何ヶ月ぶりでしょう ・・・

「ああ、俺ってなんて奴なんだろう ・・・ いつも自分のこと棚に上げて 怒ったり憎んだり批判してばっかりでよ ・・・

  俺自身が何ができてたっていうんだ ・・・ ああ、情っけね
 情っけねえよお ・・・ 」

                            ちくわさんは必死で涙をこらえてうつむいています。

ちくわさんは ガーンと打ちのめされた思いです。

「おうっ!!もちろんだぜっ!!」


大きな声で応えたあと、ちくわさんは一心不乱になって

お好み焼きを焼きはじめます。


影もまばらになった広場の向こうから

誰かがやってくる気配が ・・・


ちくわさんの目つきが変わります。

火が吹き出して ・・・

思わず怒って 蹴っ飛ばしたら ・・・

ガラガラガラッ ・・・

  そこへシラサギさんがやってきました。

目の前にはすでに がー兵衛さんが立っていて、ぶっきらぼうな口調で言いました。

    ちょうどいい具合に野菜を混ぜて、火加減を調整して・・・

 ころあいをみて裏返し、丁寧にソースを塗って ・・・ 青のりをパラパラパラ ・・・ 

       さいごは形がくずれないように そっとお皿に乗せます。

♪ べんっ ♪

ちくわさんのテンションは上がりっぱなしです。

お店にやってきても、怒りはおさまらない様子です。

だけど、ここのところ ひらめさんは

三味線を奏でようともいたしません。