♪ べべん べんべん ♪♪ べべん べん ♪   べべん べんべん ♪べんべん べん♪♪

  さて 今夜の仕込みもばっちりできました!!

あとは いつものようにお客さんを待つばかり ・・・

       おっと !! 暖簾を掛け忘れるところでした。

ガラガラガラッ 

ひらめさんが扉を開けると

お店の前に小さな坊やが

しゃがみこんでいるではありませんか!

ヨダカの坊やです。ランドセルを背負ったまま ・・・ ということは 

学校からの帰りでしょうか?


      それにしてもなんだか元気がありません。

ひらめさんは坊やと同じくらいの目線にしゃがみこみ訊ねてみます。

最初はうつむいたままのヨダカの坊やでしたが、ひらめさんの存在に安心したのか 小さな声でつぶやきます。

「 ぼく ・・・ おなか すいた ・・・ 」

ポツリポツリと雨も降り出してきました。

 このまま放っておくわけにはいきません。



ひらめさんは坊やをお店の中に招き入れ

    お皿にドーナツを盛って差し出しました。。

よほどお腹が空いていたのでしょう。 坊やはすごい勢いで口にほおばります。

あっという間にたいらげると ようやく生気が戻ってきたようでした。

ひらめさんは少し戸惑いながら訊ねてみます。

     「坊や そろそろおうちに帰らなくては みんな心配しているんじゃないですかね?べんべん」

  すると坊やは又黙りこくってしまいました。

そしてランドセルからノートや教科書を取り出したかと

思うとせっせと勉強を始めるではありませんか!


「これは何か訳があるのかもしれないべん ・・・ 」

ひらめさんはもう少し様子を見ることにします。

    「ねえ ぼくって変かな ・・・ ぼくってそんなに汚い?」


  「えっ!?」ひらめさんは最初は何のことだかわかりませんでしたが坊やの顔を見ると 

          涙がつ〜っと流れています。何かを思い出したのでしょう ・・・


「ぼくね、お勉強するのは好きなんだ。でもね、学校はキライ ・・・ だってみんなぼくのこと

”醜いから近寄るな〜!”とか”変なやつ〜”って言って石を投げつけたりするんだもの ・・・ 」

それを聞いて ひらめさんは驚きと共にやりきれない気持になりました。 この子は変でも醜くも汚くもありません。

さっきから熱心に勉強をしている姿は むしろ輝かしいくらいです。

「坊や ・・・ 」 

ひらめさんが何かを云わんとしたその時



    ガラガラガラ っと 扉が開いて ・・・

やってきたのは ドバトさん!です

ドバトさんは その小さなお客さん?を見て思わず顔がほころびました。

まあ そんなことを自慢しあったって仕方のないことなんですけどね ・・・

自然に口が開きます。

   「あのね ・・・ じつは ぼくね ・・・」

「おやおや、こんなところで

いったいどうしたんですか? べんべん 」

そこへ ・・・

だけど ちょっと焦るドバトさん

冷や汗 タラタラです

ガラガラガラ ・・・

やってきたのはちくわさんです。

ひらめさんは そっと事情を話します。

そっ〜と話したつもりだったのですが ・・・

あいかわらず過激になりやすいちくわさん ・・・

もし何かされようとでもした時にゃ

ただじゃ済まねー 

目一杯 倍返しってやつよ

それでいつも大騒ぎになってよ

おかげで しょっちゅう廊下に立たされたり

特等席(教壇前の真ん中の席)に座らされたりしたもんよ

余談ですが ・・・

「特等席」 と言えば ハムのダンナの小学校の時も ・・・

ハハハ ハハハ   ドバトさんとちくわさんの笑い声が店の中に響きます。

二人の会話につられて

ヨダカの坊やも いつしかこの場に

馴染んでおります。

坊やはなんだか気持が軽くなってきました。

だって このおじさん?たち ・・・ 昔はどうであれ 今はすご〜く楽しそうに見えるんですもの。

ここでなら 家でも言えなかったことが言えそうな気がしてきました。

しばらくすると 坊やが手を止めて小さな声でつぶやきました。

昔っから ・・・

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