前回からの続き

しばし日々の現実から離脱してしまっていたビビ子さんは

その詳細を確かめるまでもなく、カメオさんの申し出に咄嗟に返答します。

そういえば カメオさんっていったい何者なのかしら・・・

先日は興奮して、そこから勝手にイメージを膨らませていたビビ子さんは
この場になって動揺し始めます。

そうです!障子の向こうには見慣れた影が・・・!

なんと! ちょうど1年前に姿を消したひらめさんが今、目の前にいるのです。

しかし、手(ヒレ)にしていたのは南国料理ではなく

なぜか山菜料理でした。



フィニュッシュを決めた瞬間には鳴りやまない拍手です!

  何よりも、踊っている本人(鳥)がとても楽しくて心地よい!

      そして、皆が喜んでくれている!

ビビ子さんにとってそれが今、嬉しくて嬉しくてたまらないことでした。

どうしてでしょう。もちろんまだまだ未熟な部分はあるものの、

               なぜだか惹きつけられていくのです。

一人(匹)のお爺さんが

皴だらけの顔をくちゃくちゃにして言いました。

そして 一時間ほどして峠を越えると、

   眼下には集落の広がりが見えてきました。

これに全員乗れるのか!?・・とは口にはしませんが・・

ちくわさんとドバトさんですら・・・

それを見ている者は皆、満面の笑みの中、涙を流していたのでした。

”あたしが今、求められているもの・・・ あたしにできることって・・・” 
   

    ビビ子さんは、囲炉裏の横のわずか一畳分くらいのスペースに

                      すくっと立ち上がります。

その瞬間、ビビ子さんの内側から、熱いものが込み上げてきたのです。

  父との姿を重ねたからでしょうか・・・

その時です

それもほとんどが高齢の者たちばかりです。

囲炉裏の対面には十数名の村人(鳥)たちがお出迎え!

中に入ると・・・

案内されたその先は一軒のかやぶき屋根の家でした。

「さあさあ こちらですよ〜!」

そんなことはおかまいなしにカメオさんは皆を誘導していきます。

車から降りた3人(匹)は思わず息をのんでしまいました。

なぜなら 半分くらいが雨戸を閉め切ったままの家々・・・周辺には、

なぎ倒された木々がそのままになっている痛ましい光景を目の当たりにしたからです。

その日は夜もかなり深まっていたので、皆 三々五々帰路についたのでした。

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”ああ!ここがあたしにとっての最高の舞台なんだわ!”

ビビ子さんは一瞬たりとも不服を感じた自分を恥ずかしいと思いました。

さて、約束した当日 カメオさんが指定の場所に現れました。

ちくわさんとドバトさんも同行です。

余分なことはもう何も考えません。

   自然にまかせ 体が動くだけ・・

その時です。ちくわさんが大声を上げて叫びました。

みんなを乗せた小さな車はどんどん山間に入っていきます。

そう、先日の夜と同じように ・・・

”華やかなホール ・・・ デビューのチャンスのオーディション ・・・

あたしが抱いていたのは幻想にすぎなかったのね・・

これじゃ 普段おとうちゃんと接しているのと変わらないじゃないの・・・”

                内心 戸惑いの表情を隠しきれないビビ子さん・・・

かすかな期待をよせるビビ子さん