・・・ と、その時  どさっ!!と音をたてて ちくわさんは床に倒れ込みました。

ううっ・・・ ううっ・・・ 顔をゆがめて苦しそうにもがいています。

隣に居合わせたドバトさんなんかは、もうどうしていいのかわからずに オロオロしています。

そこへやってきたのは
差し入れのおかずを届けにきた
大ドババさん!!

ただ事ではない気配を感じた大ドババさんは、慌てふためく二人を一喝すると 

ちくわさんを横に寝かせて 迅速に、かつ丁寧にマッサージを始めます。

その甲斐があったのか、救急車が着いた頃には
ちくわさんの容態は、ずいぶんマシになっていました。

「もう大丈夫さっ!」そう強がってみたものの
ちくわさんは まだ不安でいっぱいです。

「無理しちゃダメよっ!検査だけは
うけなさいっ!!あたしが付いていって
あげるから!」

大ドババさんに促されると
さすがのちくわさんも逆らえません。

救急車はちくわさんと大ドババさんを乗せて病院へ

お店にいても なんだか落ち着かないひらめさんとドバトさんは 
後を追って病院へ駆けつけます。

大ドババさんの処置と点滴が
効いたちくわさんはぐっすり眠っていました。

「あらっ!あんたたち 来てくれたのね。 もうだいじょうぶよ。心配ないわ」

    大ドババさんが微笑みました。

安堵した3人はコーヒーを飲みにロビーに降ります。

ひらめさんとドバトさんの問いかけに 
大ドババさんは少し言葉を詰まらせて
言いました。

そう言うと、大ドババさんは 目頭を押さえて泣き出します。

ひらめさんは 大ドババさんの言わんとしていることが
  なんだかとてもよくわかるような気がしました。

 「あーいうことが 昔できていれば・・・」
そのひと言は、ひらめさんの胸の奥底に つーんと響きわたります。

   取り返しのつかない後悔の念・・・ 
だけど・・・ 抗えないことも事実だった・・・ そんな時代・・・

遥なる記憶の断片が、またしてもフラッシュバックしてくるようでした。

 思い出したくはないけれど・・・  風化させてもならないこと・・・

ひらめさんの目からも 一筋の涙が伝わります。

   静寂の中、聴こえてくるのは大ドババさんの嗚咽と時計の音だけ・・・

・・・と、そこへ

この場にドバトさんがいなければ、二人はとてつもなく重たい空気から抜け出せないでいたかもしれましせん。

温かいカフェオレを飲みほして 我に返った大ドババさんは帰り支度を始めます。

   そう言って強がってみせたその口調の裏側には
何とも言いようのない哀しさまでもが含まれているように思えました。

さて、ひらめさんとドバトさんが病室に戻ってみると ちくわさんが目を覚ましたところでした。 しかし ・・・

←前のページに 次のページへ→